防音性は建築構造によって大きく異なる
新型コロナウイルス感染症の拡大により、在宅時間が長くなり、今まで気にならなかった自宅での“音”に対して、ストレスを抱える人が増えました。
国土交通省の調査によると、*1 居住者間で発生したトラブルのうち、居住者間のマナーをめぐるトラブルが55.9%と高く、その中でも生活音によるトラブルが38%も占めています。
こうした音によるトラブルを回避するためには、防音性に優れた建物の知識を知ることが必要です。
今回は鉄筋コンクリート造や鉄骨造の物件の防音性能について、構造別遮音性能で比較していきます。
*1「平成30年度 マンション総合調査」の居住者間のマナーをめぐるトラブルの具体的内容
皆さんは引っ越す際に、建物の構造を考えて選んだことはありますか?
間取りや、駅までの距離など気にされる方は多いと思いますが、建物の構造にまでこだわる方は少数派かもしれません。
建物の構造の種類によって、マンションで一番苦情の多い“騒音”に関するトラブルを避けることができます。
まずは、建物にはどのような構造があるのかを見ていきましょう。
1.種類別建物の構造と特徴
1-1. 木造
木造住宅とは、住宅の構造体に木材を用いた住宅のことです。
土台や、壁、柱に使用されます。日本の一戸建ての約9割が木造住宅です。
木造住宅の大きなメリットは、基礎工事の工期が短く済み、手間がかからないのが特徴。
また、費用も安く抑えることができるので低コストで建築が可能です。
デメリットは、鉄鋼系に比べると耐久性が悪く、強度も低い為、耐震面などでも鉄骨系より劣ってしまいます。
※参照:「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計結果」 / 総務省統計局
1-2. 鉄骨造(S造)
鉄骨造には二種類あります。
【軽量鉄骨造】
軽量鉄鋼造は、薄い鋼材を使用しますが、強度が弱いため補強のために柱と梁とブレースと呼ばれる筋交いで補っています。
軽量鉄骨造では、規格化された部材を組み立てるプレハブ工法が多く用いられております。
工期が短く済む、職人の質に左右されないなどメリットがあります。
デメリットは、開口部や間取りの自由度が低いところです。
二階建ての建物に多く用いられるのが軽量鉄骨造です。
【重量鉄骨造】
重量鉄骨造は、3階建て以上の建物に多く用いられます。
例えば、柱と柱の間に大きく空間を作ることができるので、大きな窓などの設置が可能になります。
一方で建築コストは大幅にかかります。
1-3. 鉄筋コンクリート造(RC造)
鉄筋コンクリート造は、主要構造部(柱・梁・床・壁)を鉄筋とコンクリートで構成する方法です。
鉄筋を組んだ後に型枠にコンクリートを流し込みます。
メリットは強度が高い点です。
デメリットは、工期が木造に比べると長い上に、コストも大幅にかかります。
また、鉄筋コンクリート造には主に二種類の構造が存在します。
【ラーメン構造】
ラーメン構造とは、低層マンションから、高層マンションまで広く用いられている構造です。
特徴は室内に梁形や、柱形が出ますが、壁式に比べると空間を広くとれる構造です。
【壁式構造】
壁式構造はその名の通り、壁自体で支える構造のため、梁形や、柱形が出っ張りません。
家具のレイアウトがしやすいお部屋構造ができます。
1-4. 鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)
鉄筋鉄骨コンクリート造は、主要構造部を鉄骨・鉄筋・コンクリートの3つで構成します。
鉄筋コンクリート造との大きな違いは柱と梁に鉄骨の芯が入っていることです。 メリットは、鉄筋コンクリート造よりも強度が高く、主に高層マンションに用いられます。
デメリットとしては建築コストは鉄筋コンクリート造よりも高いことです。
ここまでで、建物の基本的な構造の違いをご紹介しましたが、これだけ多くの種類で建物ができていることがわかっていただけたかと思います。
構造だけを見ても、どの建物が、防音性能が高いかわかりませんよね。
防音性能の高い物件=鉄筋コンクリート造と言われていますが、果たして本当に防音性は高いのでしょうか?
2. 構造別防音性能
建物の防音性能はL値という等級で示されます。
ここでは、建物の構造がそれぞれどのような等級に当てはまるかを整理してみました。
この表をもとに、建物の構造別に防音性能を説明していきたいと思います。
引用元:日本建築学会
2-1. 木造建物の防音性能
木造は建物の中で最も防音性が低いと言われています。部屋が隣接する構造のアパートやマンションでは生活音や話し声も筒抜けになる可能性があります。
2-2. 鉄骨造(S造)の防音性能
【軽量鉄骨造】
軽量鉄骨造の場合、木造に比べると少し防音性能は上がりますが、生活音がほぼ聞こえてしまう為、ご自身でも防音対策が必要なレベルです。
【重量鉄骨造】
声などの音は軽減されますが、ドアの開閉音や、足音などの振動音は聞こえる為、上階に住んでいる場合は階下への足音などの衝撃音対策をしなければなりません。
2-3. 鉄筋コンクリート造(RC造)の防音性能
上の図を見ていただければわかりますが、鉄筋コンクリート造でも子供の泣き声や、床を走り回る音が響きます。
鉄筋コンクリートだから防音が完璧ということではありません。
2-4. 鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)の防音性能
鉄筋鉄骨コンクリート造であれば、防音性が高いと言えるでしょう。
しかし、必ずしも音が響かないわけではありません。
部屋の間取りや窓の大きさなども防音性能に影響しますので、少なからず音は響きます。
3. 鉄筋コンクリートの防音性能は高いのか?
3-1. 防音性能は建築構造によって変わる
鉄筋コンクリート造は防音性能が高いのか、上記で説明してきた通り、鉄筋コンクリート造でも音が響くことがわかりました。
防音性能は建築物の構造によって、音が響きやすい物件もあります。
賃貸マンションであるのが、外側だけを鉄筋コンクリート造で作り、内側の部屋同士の壁などを石膏ボードや木材で建てるケースもあります。
こうなると鉄筋コンクリート造でできているのにもかかわらず、通常よりも音が響いてしまい、騒音トラブルになることも。
外から見ただけでは判別がしづらく、鉄筋コンクリート造ときいて音が響かないと安心してしまいがちに。
3-2. 防音性の高い建築構造でも騒音が
鉄筋コンクリート造だと音が響かないと思い込んでいませんでしたか?
鉄筋コンクリート造でも子供の泣き声や、足音などが聞こえることがわかりました。
こうした騒音トラブルは、マンション・アパートでは近年増加傾向にあり、株式会社AlbaLinkが調査した「賃貸物件を借りて後悔する瞬間についての意識調査」では騒音トラブルが後悔の理由1位になっています。
このことからもわかるように、騒音問題は深刻なのです。
実際に住み始めると、騒音があってもなかなか引っ越すことは難しいですよね。
しかし、騒音はきちんと対策を取れば音を響きにくくすることも可能です。
鉄筋コンクリート造でも防音対策が必要なことがわかりました。
しかし、具体的にどのような対策があるのか?どのような対策が効果的なのかをご紹介します。
4. 防音対策
4-1. どのような防音対策があるのか?
防音対策には様々な方法があります。対策したい騒音にあった方法を選びましょう。
- 防音カーテン外からの騒音対策にはあまり効果はありませんが、お部屋の中の声やテレビなどの音声などが外へ漏れないようにすることができます。
- 防音テープ窓やドアの隙間から音は漏れます。防音テープで隙間を埋めることによって防音対策が可能です。
- 防音シート話し声やテレビの音などを、遮音と吸音してくれるのが防音シートです。
- 防音カーペット防音カーペットは、足音や、椅子の引き摺りなどの床に対する衝撃で発生する音に対して防音します。また、カーペットの表面にある繊維は声などの音も吸収してくれます。
4-2. 効果的な防音対策とは
対策すべき場所
騒音の原因で一番気にされているのが「足音」に関するものです。 株式会社ジャストイットが実施した「分譲マンショントラブルに関する調査」によると、騒音トラブルの種類で一番多いのが「子供の足音が聞こえる」でした。
振動による音は思っているよりも大きく伝わっている可能性があります。
鉄筋コンクリート造のコンクリートですが、きちんとした厚みと密度が無い、通常よりも音が響きます。
マンションの構造では、床の下に配線などを設置するスペースがあり、そこに空気の層ができます。
床を歩いた時に生じる振動が空気を震わせ、コンクリートを振動させます。
この現象を太鼓現象と言い、空気の15倍音を響かせてしまうこともあります。
4-3. 床の防音対策とは
騒音対策で重要なのが床の防音対策であるということがわかりました。
では、床の防音対策で最も効果的な方法とはどのような方法なのでしょうか。
こちらの図をご覧ください。先ほどご紹介した建築構造別の遮音等級表と同じような図となっています。
市販されている、カーペットなどの床材の遮音等級と、音の軽減率を表しています。
市販されている床材では、コルクマットや、カーペットなど様々なアイテムがありますが、防音に適した床材選びではどのような点に着目すべきなのでしょうか。
防音性能の一つの指標として、LL値という数値があり、簡単に説明しますと、LL値の値が小さいほど防音性能が高くなっています。店頭で販売されているカーペットで、防音と歌っている商材の多くはLL50や、LL45といった防音性能で販売されています。
しかし、実際にはこちらの商品では防音対策が不十分だと感じられる方が多くいました。
MUTEの防音専科は国内最高レベルのLL35を取得しており、今までの防音床材で満足出来なかった方にも、ご好評頂いております。
さらに、通常のLL35の商品の中でもMUTE(ミュート)の防音タイルカーペット”防音専科”は人が敏感な音域の音で−82%も音の削減に成功しました。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか。
防音性能が高くて安心だと思っていた鉄筋コンクリート造のマンションでしたが、実際には音が響くことがわかりました。
マンションやアパートなどの集合住宅では、近隣への配慮として防音対策を行うことが、騒音トラブル回避へと繋がります。
騒音トラブルのないマンションライフを過ごすために是非、防音対策に取り組んでみてくださいね。
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